このアルバムはblack midiと並んで2021年ベストかな~。Squidのデビューアルバム『Bright Green Field』です。
シングル曲ではイマイチ得体が知れなかった彼らの全貌が明らかになりましたが、いやはや驚きました。
00年代以降のポストパンク・リバイバルは、オリジナル世代のマナーにのっとりつつ、当時のトレンド、特にレイブやR&Bなどのダンスミュージックを取り入れたような作りになっていることが多かったですが、彼らはもっと貪欲というか、YouTubeであらゆる過去の音楽を並列に聴ける時代ゆえか、音楽の歴史を自由に縦断して、ポストパンクというキャンバスに、クラウトロック、サイケデリック、オルタナギターロック、ポストロック、トランス、プログレなどなどいろんな音楽をぶち込んで、それらを練り上げていったら変なモンできたぞ!という感じの、壮観なアルバムに仕上がっています。
メロディはほぼないし、ノリもテンポも8ビート主体で同じような感じ、といういかにもポストパンク的なつくりなのに、なぜか聴き飽きない不思議。よく聴くといろんな音が隠し味的に潜んでいるのが効いていますね。ヴォーカルのシャウトもなかなか味があって魅力的。無機質な感じのヴォーカルが多いポストパンク系にしては異質かも。
歌詞の内容は、資本主義への批判的視点がベースとなりながらも、音と合わさった時の感覚とイメージを楽しむような抽象的なものになっていて、何回も繰り返し聴きながら自分なりの意味を想像していくのが楽しい。
どうでもいいことですが、「Paddling」の最後の「Don’t push me in」っていうリフレインはつい「押すなよ!押すなよ!」の絵が浮かんでしまいます。
そしてこのPVですよ。
こんなオッサンのPV、日本じゃ作っても曲が売れないし、そもそもレコード会社からOKが出なさそう。(やれるとしたら電気グルーヴくらいか?)
最近の日本はどうしたって「オタクカルチャー」的な切り口が無いと売れなくなっているので、日本ではこういった知的なアート精神に則った純ロック的な音楽って絶対流行らんでしょうし諦めてますが、日本もかつてはINUやPhewなど優れたインディーポストパンクバンドがいたことを思うと、イギリスのポップカルチャーがいろいろと羨ましいなあと思う次第。
彼らが来日したら、絶対ライブ見に行く。彼らの活きが良いうちに(イカだけに)パンデミックが収束して欲しいぞ。
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[…] なおデビューアルバムのレビューはこちら。 『Squid / Bright Green Field(2021)』 […]